中国電力による損害賠償請求傍聴 2013/05/15
5月15日14時から中国電力による損害賠償請求訴訟が山口地裁で行われました。
原告は中国電力、被告は祝島島民2名、若者2名。
中国電力は上関原発を建てようとしている田ノ浦の埋め立て工事を妨害したとして、
4人に4800万円もの損害賠償請求を行っています。
この日は訴えられている祝島島民の清水さんの意見陳述がありました。
陳 述 書
清水敏保
私は、本裁判における被告の一人である、清水敏保と申します。
私たちは、上関原発建設予定地の埋め立て準備工事を妨害したとして、中国電力より、約4800万円の損害賠償を請求され本訴訟となっています。
1982年に中国電力による上関原発建設計画が浮上して、今年で31年が経過します。
私ども祝島島民の9割以上の人たちは、原発建設計図が浮上以来、一貫して建設反対の姿勢を堅持してまいりました。私たち祝島の島民は、原発建設予定地の正面、約4キロメートルの離島で生活をしております。また、原発予定地からは、何もさえぎるものはありません。そして、予定地周辺の海域は、漁業を中心に生活をしている祝島島民にとって、まさに生きるために欠かすことのできない「命の海」であります。
福島第一原発事故後、原発から半径5キロの範囲については、原子力防災指針において「予防的防護措置を準備する区域(PAZ)」とされ、原発事故が発生したら、放射性物質の放出の有無にかかわらず、直ちに遊離等を実施する区域と定められました。私たちの祝島は、すっぽりとその5キロの中に含まれます。祝島は文字通り離島であり、移動手段は船舶しかありません。直ちに避難するといっても船には制限があり、また、天候によっては避難そのものが不可能なのです。
私たちが、原発建設のための埋め立て準備工事に反対したことは、福島第一原発で明るみになった、原発の大きな危険性を見ても明らかなように、そもそも私たちが、普通にこの場所で生きていくため、また、大切なふるさとを子どもたち、孫たちに健全な形で残していくためであり、まさに「正当行為」であると考えます。
また、今回の事件について事実関係をよく見ていただけば、私たちの抗議行動そのものは、工事を止めてしまうほどのものでは全くありません。
これに対して、中国電力配下のJVの作業員が行った行為は、クレーンでカヤッカーを吊り上げ台船の上に引きずり上げたり、岡田君を数人で羽交い絞めにして、救急搬送されるような事態を引き起こしたりと、乱暴極まりないものです。
私たちの抗議行動は、その方法においても何ら非難されるものではなく、いかなる意味でも損害賠償の対象となるものではないと確信しています。
このように、私たちの抗議行動が、原発建設をさせないという正当な目的を有し、また、その方法もあくまでも非暴力によるものであるからこそ、埋め立てに反対する輪は、日本全国の人たちにも広がり、全国の人からも有形、無形の応援をいただくことになりました。例えば、原発建設予定地田ノ浦の現地に来ていただき、一緒に抗議行動に参加し協力してくれる方たちや、「ふるさとの海を子や孫に残そう」「埋め立ては許さない」などと、自分の気持ちを布メッセージに託す方、また、手紙や電話等で、長い間上関原発を建てさせないで頑張ってきた事への感謝の声がたくさん届けられました。
そして、福島第一原発事故後、山口県内はもとより広島県や大分県の自治体において、「上関原発建設の中止」や「凍結」が決議されました。山口県議会においても2011年7月8日に全会一致で「上関原発建設の凍結」が決議されています。
今回の山口県知事の埋め立て免許の延長申請に対する態度のように、揺り戻しらしきものはあっても、大きな意味では、上関原発建設計画はもう中止すべきということが世論に支えられていると確信しております。
中国電力においても、その本音の部分では、上関原発の建設は実質的に不可能だと思っているものと考えています。しかし、原発建設がいわゆる国策として進められてきた状況において、自らの口から「上関原発は止めます」と言えないのは、正しい意味で勇気がないとしか言いよ
うがありません。私たちの行動は、無駄となる原発建設のための支出を減らしているわけですから、感謝されることはあっても、損害賠償を求められることは無いと思います。
中国電力は、もう本訴訟を取り下げるべきだと思います。裁判所におかれましても、このような私たちの行動の正当性を正確にくみ取っていただき、速やかに請求棄却の判決をされることを強く要望いたしまして私の陳述とします。
以上