被爆二世集団訴訟福岡高裁不当判決抗議!

 2月29日、降りしきる雨の中を、長崎原告の仲間はチャーターしたバスより福岡高裁前の六本松公園に降り立った。40名近く集まった原告と弁護団、支援者による事前集会が始まる。
 一人一人、思いのこもった発言が続く。被爆二世の仲間の中には白血病やガンなどの病気で亡くなっている者もいる。この日までに既に原告の2名が亡くなった。
 原告の一人の丸尾育朗さんはすい臓がんを患い生き抜こうとしたが、判決をみることなく亡くなった。無念の思い引き継ぎ、遺族であるお連れ合いの方が丸尾育朗さんの遺影を持って参加した。

 横断幕を先頭に、原告と共に闘う仲間は裁判所に向かった。
 14時30分、高瀬順久裁判長は「本件各控訴をいずれも棄却する。控訴費用は控訴人らの負担とする」と読み上げ、わずか一分足らずで法廷を立ち去った。許すことのできない不当判決だ!
 その後、16時から福岡県教育会館で行われた報告集会で弁護団長の在間弁護士が、「想定した判決の中で最悪の判決である」と述べた。被爆二世の現実に一切向き合うことなく、被告(国)側に立って、国の言い分を後押しする不当判決だった。

 判決要旨・骨子の「2裁判所の判断」は以下の通り
(1) 憲法13条違反について
 原爆の放射線による遺伝的(継世代的)影響が否定できない健康不安に対する国の援護を求めることは、憲法13条に包摂される権利として抽象的であり、そもそも同条から国に対して立法措置を求める権利を導き出すことはできない。
(2)憲法14条違反について
 被爆二世については、原爆による放射線の遺伝的影響は証明されていない。これを肯定する研究結果もあるものの、これまでの調査研究では、ヒトに対する症例的調査研究、DNA調査、全ゲノム解析による研究において、否定的な研究結果が複数発表されている。また、被爆者の子供に死亡率、がん発症率の増加は認められていない。控訴人ら主張に係る被爆二世に対する原爆被爆の放射能により健康被害が生じる可能性について、その健康被害の可能性の前提となるべき原爆被爆による放射線の影響(被爆二世については遺伝的影響)は、被爆者援護法所定の「被爆者」又は被爆者援護法附則17条の「みなし被爆者」のそれらとを比較した場合、その基礎となる医学的、科学的知見の現状(現時点における到達点)等において顕著な差異がある。
 そうすると、被爆二世について、被爆者援護法所定の「被爆者」又は被爆者援護法附則17条の「みなし被爆者」に含め、同等の措置を講じるか否かについては、国会の総合的政策的判断を要する合理的な裁量的判断に委ねられているところ、そうしないことが、合理的理由のない差別的な扱いとはいえず、憲法14条1項に違反しない。
(3)以上によれば、控訴人らの請求を棄却した原判決は相当であり、本件各控訴はいずれも理由がない。 以上

 この判決の不当性は、第1に(1)の「憲法13条に包摂される権利として抽象的であり、」と述べている所だ。被爆二世の健康不安は、被爆者である親と同じようにいつガンや白血病になって死ぬかもしれないという時限爆弾を抱えたような重たいものであり、被爆二世の中には生死を左右する場合がある。だから、親も心配したし、被爆二世本人も恐怖の中で被爆二世であることを考えないようにして生きている者もいる。私たちの体の中では、今も戦争(核兵器による攻撃)が続いているのであり、核兵器の非人道性の最たるものの一つと言える。
 第2に、(2)の憲法14条違反について、「また、被爆者の子供(ママ)に死亡率、がん発症率の増加は認められていない。」と断言している。どうしてこのようなことが言えるのか?これまで国は一度も被爆二世の実態調査も行ったことが無いし、被爆二世の人数さえ把握してない。
 被爆者は、被爆者援護法により医療費の自己負担分の助成などがある。この制度により、被爆者は被爆者健康手帳を申請するようになった。その結果として国は被爆者の実態がわかるようになった。
被爆二世の場合、ガン検診も無い単年度措置の被爆二世健診しかない。職場検診よりお粗末な内容なので被爆二世検診を受けない被爆二世も多い。検診結果を国は分析もしていない。その実態は、未だ闇の中に葬り去られている。
 第3に、「被爆者援護法所定の「被爆者」又は被爆者援護法附則17条の「みなし被爆者」のそれらを比較した場合、その基礎となる医学的、科学的知見の現状(現時点における到達点)等において顕著な差異がある。」と言っているが、上記のように被爆二世の実態を把握していないのだから「顕著な差異がある」と断定するのはおかしい。
 そして、第1~第3を根拠にして被爆者援護法に基づく被爆二世の援護をしていないことを、「国会の総合的政策的判断を要する合理的な裁量的判断に委ねられているところ、そうしないことが、合理的理由のない差別的な扱いとはいえず、憲法14条1項に違反しない。」と結論づけている。
 戦後70年以上にわたって、立法府が国会で被爆二世の問題を審議し被爆者援護法に基づく援護措置を講じることが出来たにも関わらず、それをしてこなかったことを司法が免罪していいのか。三権分立という司法の独立を無視し、被爆二世の健康不安を放置し、被爆二世を原爆被害と差別の渦中の中に落とし込めてきた国を擁護するこの福岡高裁判決を絶対に許さない。私たちは、弁護団と共に法廷内外を貫いて、原爆被爆二世の援護の道を切り開くために断固闘う!

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