被爆二世集団訴訟 広島地裁不当判決

 2023年2月7日(火)午後1時15分、広島地裁の裁判長は「原告の請求を棄却する。裁判費用は原告の負担とする」とだけ述べ、判決を下した。およそ6年続いた被爆二世の援護を求める集団訴訟が、1分足らずで終結したのだ。国が被爆二世に対し、被爆者援護法に基づく援護をしていないのは、憲法13条違反の国の立法不作為であり、被爆者と同等の援護を被爆二世にしないのは、憲法14条第1項違反だとする私たち被爆二世の主張は、退けられた。しかも、その判決内容を見るや、理解に苦しむ言葉がならんでおり、在間弁護団長は、「初めに請求棄却ありきの判決だ。きわめて悪い判決で、説得力に欠ける判決だ。昨年12月12日に下りた長崎地裁の判決よりも、もっと後退した判決だ」と批判した。

 この裁判の争点は2点ある。ひとつは、放射線被害の遺伝的影響をどう評価するかで、もうひとつは被爆者援護法第1条3号の被爆の趣旨をどう理解するかだ。
 まず、2点目の被爆者援護法の第3号の趣旨は何かということだが、これは黒い雨訴訟の判決と争点が重なる。黒い雨訴訟の高裁判決では、黒い雨に打たれた人が被爆者援護法の第1条3号に該当するということで援護の対象として救済をした。私たちは、その判決で展開されている原爆放射線による健康被害の可能性がある人が第3号被爆者だとする趣旨からすれば、同じ立場にある被爆二世についても、第3号被爆者と認定できるはずだと主張した。しかし、裁判所の言い分は、直接被爆していない被爆二世は、第3号被爆者に該当しないと新たに規定して、除外した。裁判所の言う「直接被爆」とは、原爆が投下された当時実在していたことで、まだ実在していない被爆二世は直接被爆していないというのだ。
 1点目の二世の遺伝的影響については、否定できないものだから、「ヒトに関する放射線の遺伝的影響があることが通説的見解や有力な見解として一般的に認識されているとは認められていない」と、ほ乳類であるマウスを使った動物実験で放射線の遺伝的影響が証明されているにも関わらず、それを否定した。
 また裁判所は「放射線被曝の遺伝的影響による健康被害の可能性が科学的に明確に否定されているとはいえない現状からすると、被爆二世である原告らが自らの健康等につき不安を抱くのは自然なことである」といいながら、援護の対象者については「国会の合理的な裁量的判断に委ねられている」としている。私たちはこれまでも、厚労省交渉や署名活動をしてきた。それでも援護の対象とならなかったから提訴したのだ。
裁判の報告集会で、原告の一人が「僕たちは、実験動物なのか。自分たちの体でもって人間への影響を証明しろと突き付けられた」と怒りをあらわにした。
 私たちの遺伝学の証人となった振津先生は、「裁判所の方こそ科学的でない。体細胞と生殖細胞の違いを理解していない。直接被爆した生殖細胞によって生まれてきたのが被爆二世なのに」と痛烈に判決を批判した。
 控訴審ではもっと国を追い詰め、被爆者援護法の第5の被爆者として被爆二世の援護を実現したい。今後とも傍聴支援よろしくお願いします。

 今回の裁判に、オーストラリア在住の日本人が応援に駆けつけて下さった。二年前、インターネットを通じて知り合い、オンラインで交流をしてきた。長崎地裁不当判決を知り、広島地裁判決は是非とも傍聴したいと連絡があった。またオーストラリア先住民のビデオメッセージも送ってくれた。
https://youtu.be/Ez5LCG-viC4

広島地裁での行動も短いビデオにして下さった。
https://youtu.be/Smp1nWtG7CI

多くの人々に核兵器の被害を知っていただき、ウランの採掘から禁止するような行動に繋がる活動をしていきたい。

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