2023全国二世交流会

去る2月18日から19日にかけて広島市平和公園内の原爆資料館で、全国交流会が開かれた。全国から約50名の被爆二世や支援者らが集まった。平野克博事務局長の司会の下、崎山会長が開会あいさつをした。

崎山会長あいさつ(要約)
全国被爆二世協が30年以上にわたって、厚生労働省交渉や国会議員への働きかけを行い、被爆二世・三世の援護を求めてきた。被爆70年を迎えた2017年に、二つの取り組みを決定したこと。それが、国連の人権理事会に日本政府の被爆二世に対する人権侵害を訴えることと、被爆地広島と長崎における被爆二世の援護を求める集団訴訟だ。この被爆二世集団訴訟の1審判決が長崎地裁で昨年12月12日、広島地裁で本年2月7日に出された。国側の立場に立って、私たちの請求を棄却する不当判決だった。到底納得できるものではないが、両地裁とも原爆放射線の遺伝的影響の可能性を否定できないことを認めた。そういう意味では、被爆二世の原爆による放射線の影響を認めた歴史的判決であり、被爆二世問題を国民的課題に押し上げていく大きな一歩になった。この判決を踏まえ、広島・長崎共に控訴審で被爆二世に援護の道をひらくために闘う決意を新たにしている。原水禁運動の先頭に立つのは被爆二世であることを自覚し、共に闘う。

 続いて、来賓のあいさつだ。
 参議院議員の森本真治さんは、被爆二世問題をはじめとする被爆者援護の超党派の議員懇を作っていくことと核兵器廃絶の取り組みを車の両輪として闘うと挨拶された。
 原水禁国民会議共同代表の金子哲夫さんは、全国被爆二世協がもっと全国の被爆二世団体と連携して被爆二世全体の運動を盛り上げてほしい。そして、原水禁運動や核兵器廃絶の運動、被爆者援護の運動、そして最も大事な被爆体験の継承の運動を真に引き継いでいく運動体になっていくことを願っていると話された。
 他にも自治労中央本部や日教組の方からも挨拶を頂いた。最後に広島県被団協の箕牧智之さんの連帯メッセージが紹介された。

 講演Ⅰは、「長崎判決・広島判決をどう見るか」と銘打って、被爆二世集団訴訟弁護団長の在間弁護士が講演された。
在間弁護士の講演(要約)
 両判決は、放射線の遺伝的影響はよく分からないというところでごまかした。その上で被爆者援護法にあてはめて、被爆二世を援護の対象にするかどうかは国の政策の問題であって、我々が主張した憲法違反という域には達していないとした。そして、結論としては裁判所(司法)としての責任を回避した。この判決を受けて、特に広島判決の後、マスコミが被爆二世問題を良く取り上げて報道した。予想外の不当判決だったが、被爆二世問題が社会的に広まったというプラス面がある。被爆二世の訴訟というのは、他の原爆関係の訴訟とは質的に違う面がある。どこが違うというと、二世訴訟というのは核兵器による健康被害が現在存在し、しかもそれが未来に受け継がれていくという形で存在するからだ。過去の問題に対して、国はどうするかということとは質的に違う。現在の問題だ。この意味で非常に大きな意義がある裁判だ。
 裁判を起こしたのは、5年前、結局は私たちはこの裁判で何を訴えてきたのか、その意義を振り返ることで整理する。原爆関係の訴訟の一番基本的なことは、原爆被害は特殊な戦争被害だという基本認識の下に、他の戦争被害とは区別して、生存被害者に対して医療を中心に援護をするということ。第2次世界大戦で日本人が330万人、アジアで2000万人、空襲で40万人、沖縄戦で20万人の人々が亡くなっていると言われている。空襲の被害、これは一般の被害と言われているが、何の補償もされていない。同じような敗戦国のドイツやイタリアではどうしているかというと、空襲被害者に対して賠償をしている。イタリアでは、家財道具まで賠償している。いかに日本政府は、民に対して冷たいか、いや何もしないということがわかる。
 その上で、被爆者援護に関する事実経過を振り返る中で、1963年の原爆訴訟東京地裁判決が核兵器を毒、毒ガス以上の国際法違反の非人道的な兵器だと断罪していることに触れて、毒ガスも、対人地雷も、クラスター爆弾も禁止条約があるのに、核兵器に禁止条約がないのはおかしいと話された。その被害を被った日本政府は、核兵器禁止条約の先頭にたたなければならないはずだ。核共有や核武装をしたいと考える勢力がいるからそれができていない。被爆二世に原爆放射線の遺伝的影響の可能性が否定できないということは、非人道兵器の最たるものの証であり、それを訴えることが核兵器を禁止する力となるとはなされた。また、3.11福島第一原発の過酷事故が発生して10年以上経つ中で、放射線の許容線量を上げて放射能被害を無かったことにしようという攻撃が強まっている。もう一つの現在の福島の放射能被害とつながっているからこそ、国は放射能の遺伝的影響の可能性をできる限り過小評価しようとする。
 すなわち、被爆二世集団訴訟の意義は、核廃絶の大きな力となり、原子力政策を変えさせる力を持っているということだ。
 あきらめずに、国の戦争政策や原子力政策と対決して闘おう。

また、講演Ⅱでは、「将来世代を含む核被害者の人権確立と核廃絶をめざして ―国際的な取り組み」と題して、崎山会長が以下の内容を話した。
崎山会長の講演(要約)
 国連人権理事会で日本の被爆二世が置かれた状況を人権侵害と訴えた。2022年7月21日に国連・社会経済理事会の特別協議資格を取得した。核兵器禁止条約第2回締約国会議に代表団を派遣して、サイドイベントで日本の被爆3世や被爆4世やマーシャル諸島の被爆3世と一緒に論議して、新たな信頼関係を作り出した。第10回NPT再検討会議でニューヨークに代表団を派遣して、NGO意見表明セッションで、崎山会長のビデオメッセージを流せたことは、一つの到達点だ。被爆二世の人権侵害の現実を国際的に訴えた。

 二日目は、「フクシマの現状と課題」と題して、兵庫医科大学の振津かつみさんのお話を聞いた。
振津かつみさんの報告(要約)
 ICRP(国際放射線防護委員会)も認めている野村大成先生のマウスを使った遺伝的影響の可能性があることを証明した科学的知見を、否定する国側の証人は、原子力を推し進めようとする原子力ムラの以降を汲んでいる。福島第1原発の過酷事故が起こってから、福島に来て放射線の人体への影響を過小評価した人たちだ。
中島証人とその人たちの名前が並ぶ国側の書面を見て、被爆二世集団訴訟は国の原子力政策との闘いとなると感じた。
 国は東京電力福島第1原発事故による避難者らを対象にした医療や介護の保険料などの全額免除を、2023年度から段階的に縮小しようとしている。そのことに反対する署名運動や福島原発の被害者も被爆者のような手帳を求める運動をしているが、差別を恐れ手帳運動はなかなか厳しい状況だ。
 国は放射線の影響を過小評価することで、被害者を分断させる。
一筋縄ではいかない。野村大成先生の意志を引き継いで共に闘う。

 最後に、各地からの報告がなされ、交流会は盛り上がった。もっともっと仲間を増やして頑張ろうと誓った。

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